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“リアル&バーチャル”での情報共有が建設プロジェクトを成功に導く |
“リアル&バーチャル”での情報共有が建設プロジェクトを成功に導く CIO
国内建設業界を巡っては、昨今、耐震強度・耐火性能偽装事件、施工ミスの発覚といった暗いニュースがメディアをにぎわせている。そうしたなか、建設業大手の大林組では、成果物の品質向上、事故・ミスの撲滅、技術の伝承などを徹底するために、社内外の情報やノウハウをさまざまなかたちで共有・活用することを目指している。そこで本稿では、建設プロジェクトにおいて関係者間の情報流通をスムーズにする仕組みや、“現場”を支援するために同社が整備している仕組みなどを検証しながら、大林組が目指す“情報共有のあり方”を探りたい。
CIO Magazine編集部 ● text by CIO Magazine
品質と安全を確保するための情報戦略とは 大林組 東京本社でIT戦略企画室長を務める金井章男氏は、「過去の情報やノウハウを有効に生かすことができれば、作業をゼロからスタートせずに済み、品質の向上だけでなく、業務の効率化も図ることができる」と力説する photo by Keiji Kaneda 公共工事や民間建設投資の減少が続いたことで、成長に陰りが見える国内建設市場。最近、その国内建設市場を巡っては、耐震強度・耐火性能偽装、施工ミスといった負の側面が立て続けに報じられており、消費者からは建造物の品質に対する建設会社の責任に注目が集まっている。そうしたなかにあって、建造物の品質や作業の安全性を確保するという建設業の“基本”に立ち返り、それらを達成するための体制づくりに取り組んでいるのが建設大手の大林組だ。
大林組は、丸ビル、六本木ヒルズ森タワーや関西国際空港、明石海峡大橋といった名だたる建築・土木プロジェクトを手がけたほか、新たな建築新技術の開発にも積極的に取り組んでいる。十数年前に開発した「ABCS(Automated Building Construction System)と呼ばれるビル建設システム(※1)などは、順次改良が加えられながら、高層ビル建築の実績を積んでいる。
その大林組では今、建設現場と関係者の間で、スムーズかつ正確な情報のやり取りを実現するための仕組みを整えるとともに、各人が持つ情報や知識を引き出しやすくするような環境も整えられている。
一般に、ある建造物を建設する際には、大林組のような総合建設会社(ゼネコン)のほか、専門工事会社、設備工事会社、職別工事会社、さらには専門技能者や労務提供者など、さまざまな企業がかかわることになる。大規模な建設プロジェクトともなれば、その業者数が数十、数百になることも珍しくない。さらに、建設プロジェクトという言葉でひとくくりにされてはいるが、そこには、企画提案、設計・見積り、契約、施工、竣工・引き渡し、保守管理、診断、リニューアルといった数々のフェーズが存在している。そのため、会社やフェーズにおいて、誤った情報が流通したり、情報の連携不足が起こったりすると、建設プロジェクトが予定どおりに進まないどころか、不具合や施工ミスすら発生しかねないのである。
大林組東京本社でIT戦略企画室長を務める金井章男氏は、この点に関して、「建設会社にとって重要なのは成果物の品質を上げ、ミスや事故を撲滅し、技術を伝承することだ。そのためには、関係者間で必要な情報を必要なタイミングで共有する仕組みが欠かせない。また、建設業においては、プロジェクトごとに、建造物も、場所も、関係者も異なるので、プロジェクトを実施している間だけ情報共有を行っていればよいのではなく、プロジェクトの終了後も、情報の保管と再利用、技術やノウハウの伝承といったことが必要になる」と強調する。
<注釈> ※1:鉄骨造の高層建物を対象にした建築工法で、建築物を屋根と壁で覆い、季節や天候に左右されることなく建設作業を実施できるようにする。また、作業の自動化や機械化を実現することで、短工期で品質の高い建物を提供できるという特徴も備えている。
プロジェクト関係者の間で必要な情報を共有 情報ネットワーク部知識情報基盤グループ長、太田洋行氏は「失敗事例は“良質”な教育コンテンツでもある」と主張する photo by Keiji Kaneda 通常の建設プロジェクトでは、設計や施工などのフェーズごとに担当する会社が異なり、責任の所在や範囲も異なる。また、建築・土木プロジェクトにおいては、下見積データ、CADデータ、工程管理に必要な指示書、Q&A、議事録、管理表、工事写真、設計図面など多彩な情報がやり取りされるが、こうした情報はプロジェクトの進行に伴って、アップデートされたり変更されたりする。そのため、情報の流通が各企業内で閉じられてしまったり、同じ情報でも異なるバージョンの情報がやり取りされたりすると、コストや工期を予定どおりに進めることが難しくなる。
こうした情報は、これまで郵送やファクス、電子メール、ファイル・サーバなどを介して共有されてきたが、情報伝達に漏れがあるようなケースもあり、より簡単かつスピーディに情報共有を図れる仕組みが求められていたのである。
そこで大林組では、建設プロジェクトごとに、それにかかわる関係者の間で情報を共有/伝達/保管することができる共通プラットフォームを用意した。それが2004年にカット・オーバーされた「OC-COMET」と呼ばれるネットワーク・サービスである。このシステムでは大林組だけでなく、建設プロジェクトにかかわるグループ会社やパートナー(発注者、設計事務所、協力会社など)が、会社ごとに用意されたメニュー画面から、見積データやCADデータを参照したり、工事写真や設計図面などをアップロード/ダウンロードしたりすることができるようになっている。金井氏によると、OC-COMETには3,400社以上の協力会社が登録されており、同一バージョンの情報を多数の関係者間でリアルタイムに共有したり、大容量のCADデータを容易にやり取りしたりするのに役立っているという。
現在、OC-COMETに入力・蓄積された情報は、プロジェクト終了後にはCD-Rに記録されて保管されるようになっている。だが、オフライン(CD-RやDVD)で蓄積された情報は参照・検索するのが不便なため、同社では、「OC-COMETに入力・蓄積された情報を、竣工後はここから取り出し、いつでも検索・参照できるような仕組みを整えたい」(情報ネットワーク部知識情報基盤グループ長を務める太田洋行氏)と考えているという。なお、金井氏が、「我々の仕事は、建物を建てるだけでなく、建物にまつわる情報をも管理し、必要な時にいつでも取り出せるような環境を整えておくことでもある」と明言するように、同社がこれまで手がけてきた建設プロジェクトにまつわる情報(その多くは、紙やマイクロフィルムで保存されている)についても、順次、電子化が図られているところである。
また、建設プロジェクトの中でも、特にトンネルやダム、橋梁といった土木分野は、職能ごとの専門性が高く、正確かつ緻密な情報のやり取りが必要になる。そのため、同社では各土木プロジェクトの関係者向けに、特別な情報共有の“場”を提供している。
例えば、トンネルの建設では、切羽(坑内作業の現場)の管理がキモとなるわけだが、掘削作業現場の状況や作業状態を言葉や写真だけで“正確”かつスピーディに伝えることは困難である。そこで同社は、トンネル工事にかかわる担当者向けに提供されるネットワーク・サービス「トンネルネットワーク」に、ライブ映像を見ることができる機能を搭載し、遠隔地からもリアルタイムで作業状況を確認できるようにしている。
過去には、近くに大量の湧き水が流れているため、技術的に難しい掘削作業が求められるケースもあったが、そういった場合でも、工事現場から地理的に離れた技術研究所の専門家が作業を映像で確認し、アドバイスを行うという方法をとることにより、安全に工事を進めることができたという。
テーマ:ニュース
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